「パラサイト 半地下の家族」でアカデミー賞4冠達成したポン・ジュノ監督作品!
キム・ヘジャ×ウォンビン×チン・グ共演による息子の無実を証明するために奔走する母親の姿を描いたサスペンス・ヒューマンドラマ。
キャスト、あらすじ、感想などをまとめました。
(トップ画像公式ページより)
母なる証明【ポンジュノ韓国映画】キャスト一覧
2009年5月28日韓国にて公開(日本公開日2009年10月31日)
上映時間:129分
観客動員数:約298万人
監督・原案:ポン・ジュノ
「殺人の追憶」
「グエムル漢江の怪物」
「パラサイト半地下の家族」など
脚本:ポン・ジュノ、パク・ウンギョ
【母親役】キム・ヘジャ
息子想いのトジュンの母親。
【息子トジュン役】ウォンビン
知的障害者。
【ジンテ役】チン・グ
トジュンの悪友。
【ミナ役】チョン・ウヒ
ジンテのガールフレンド。
【ジェムン刑事役】ユン・ジェムン
警部補。
【アジョン役】ムン・ヒラ
亡くなった少女。
本作は2009年に公開され、その年の観客動員数トップ10入りしたヒット作です。
観客動員数約298万人というのはポン・ジュノ作品の中では少ない方ですが、ウォンビン出演作ということで日本でも注目されました。
第30回青龍賞最優秀作品賞受賞作。
そのウォンビンが映画に出演するのは「ブラザーフッド」以来5年ぶりであり、兵役後の復帰作品でもあります。
そして主人公である母親役のキム・ヘジャの演技力も同様に絶賛され、”韓国の母”とも呼ばれる国民的大女優ぶりを見事に発揮しています。
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母なる証明【韓国映画】あらすじ
とある静かな田舎町で母親と一人息子が漢方屋を営み暮らしていました。
しかし息子のトジュン(ウォンビン)は成人しているものの中身は子供のようで、そんなトジュンを母親は溺愛し、悪友のジンテ(チング)と遊ぶのも禁止するほどにいつも心配ばかりしていました。
そんなある日、女子高生が無惨に殺されるという事件が発生し容疑者としてトジュンが逮捕されてしまいます。
そしてわずかな証拠からトジュンが犯人だと決めつけた警察は、強引な取り調べにより自白を強要したのです。
息子の無実を確信する母親は、警察をはじめ弁護士にも無実を訴えるものの取り合ってもらえず、自らの手で真相を突き止めようと奔走するのですが・・・。
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母なる証明【韓国映画】解説・考察・みどころ
ポン・ジュノ監督は最新作「パラサイト~」でも格差社会をテーマにしていますが、これまでの作品でもこのテーマを幾度となく描いてきました。
内容は殺人者として逮捕された知的障害者の息子の無実を証明するために母親が奔走するというもの。
この作品には日々の生活もままならない人々や、生活をするために悪事を働く少年少女などが多数登場するんですが、そんな中でも底辺として描かれているのがトジュンであり被害者のアジョンなんです。
強者によって弱者が虐げられるというのはよく描かれるものですが、本作の中ではそんな弱者の中にも明確な序列があることを描いています。
通常の作品だとそんな母親が最後には真犯人を見つけ出して息子の無実を証明するというハッピーエンドになりそうなものですが、実際にはそんな都合のいいことになるわけもなく・・・。
そもそも母親が息子に対して行き過ぎた愛情を示すのも、過去に息子に対して行ったことに対しての贖罪のようなものがあるのかもしれません。
本作は俳優陣の演技力がとても素晴らしく、テーマが重くて暗いものであってもそこにコミカルさを感じたり嘘臭く見えないのはその点につきると思います。
果たして厳しい現実を生きる少年少女たちの未来はどうなっていくのか?
そして、息子の無実を証明しようとする母親は信実にたどり着くことが出来るのか!?
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母なる証明【韓国映画】感想・評価
ポン・ジュノ作品の特徴の一つに、サスペンスの中にユーモアを入れてくるというものがあります。
サスペンスだから全編シリアスだと思うのは間違いで、日常の中で事件が起きたのなら当然そこにはユーモアもあるわけで、それがバランスよく描かれているのが作り物のように見えない所以だと感じました。
作品をちゃんと見ていない人からすると、人の死や悲劇を笑うなんて不謹慎だと怒るかもしれませんが、緊迫した場面だからこそ笑いが生まれたり、必死な姿が周りからはコミカルに見えてしまうということもあると思うんです。
これが、ただ恐いとか可哀想とかだけで描かれていた逆に嘘臭く思えたかもしれません。
そもそも知的障碍者の犯罪なんて日本映画だとタブーの意識が働いて描かれないでしょうし、それを活かしたとしても知的障害者が周りに受け入れられていく過程を偽善的に描くかもしれません。
そんなタブー視されそうなものを扱いながらも、本作は我が子を思う母親の偉大さを描くという普遍的なものがテーマであり、弱者を正義強者を悪だと単純に描いていないのもスゴいところ!
本作のような事件の背景には確かに貧富の差や格差社会というものがあるんですが、最後には権力者や金持ちが悪人だったという結末になるのではなく、ちゃんと現実を描いているのがポイントなんです。
通常なら警察もたどり着けなかった真犯人を母親が執念で見つけ出す!という結末になりそうなところ。
しかしそんな都合のよさは本作にはないんです。
うちの子がそんな悪いことをするわけがない、知的障害者なんだから誰かに罪を着せられたに決まっている、視聴者はそんな思いに駆られながら、その先には思いもよらぬ悲劇が待っているんです。
少年少女が生活のために悪事を働いていたり、大人たちがそんな子供たちを助けることなく役に立たないことも事実としてあることで、現実として生活のためには悪事を働くしかないという少年少女が確かにいるんだということを思い知らされます。
ポン・ジュノ作品の中では他に話題作やヒット作が多いため忘れられがちですが、実は本作が一番現実味がある作品だと思います!
まとめ:息子に対する母親の愛情の強さに恐怖すらおぼえる母性愛の狂気についての映画!
そして、韓国の格差社会を真っ向から描いた問題作でもあります。
最後に
デビュー当時から様々な作品で格差社会についてや、社会に対する不満などを作品の中に乗り入れてきたポン・ジュノ監督。
その中でも一番の問題作が本作です。
内容はシンプルなものなんですが、その中には韓国の貧困層のシビアな現実やそういう人たちに対する世間の冷たさなどがリアルに描かれていて、単純なミステリーものや犯罪捜査ものとは違ったヒリヒリ感がありました。