キム・ヘス×キム・ゴウン×パク・ボゴム共演で贈るサスペンス映画。
韓国・仁川の暗黒街を舞台に繰り広げられる愛憎劇が描かれています。
キャスト・あらすじ・感想などをまとめました。
コインロッカーの女 キャスト一覧
原題:チャイナタウン
2015年4月29日韓国で公開(日本では2016年2月16日公開)
上映時間:111分
観客動員数:約147万人
監督、脚本:ハン・ジュニ
【イリョン役】キム・ゴウン
【”母さん”役】キム・ヘス
【ソッキョン役】パク・ボゴム
【チド役】コ・ギョンピョ
【ゴン役】オム・テグ
【ホンジュ役】チョ・ヒョンチョル
本作はハン・ジュニ監督のデビュー作で、第68回カンヌ国際映画祭の招待作品でもあります。
コインロッカーの女 あらすじ
コインロッカーの中にへその緒がついたまま捨てられていた赤子は、ロッカーの番号が10番であったことから10という意味のイリョン(キムゴウン)と名付けられました。
後にイリョンは仁川のチャイナタウンで闇金業を営む”母さん”(キムヘス)と呼ばれる女のもとに引き取られることに。
彼女はチャイナタウンの裏社会を牛耳る存在で、イリョンはそんな彼女と同様の冷酷な人物に成長し、やがて彼女の右腕的存在になっていきます。
ある日、父親が作った多額の借金を背負った青年ソッキョン(パクボゴム)のもとに取り立てに行ったイリョンは、不幸な環境に置かれながらも明るく純粋な彼に惹かれるようになります。
しかし、父親が借金を残したまま失踪してしまい、母さんはイリョンに彼を殺すように命じるのですが・・・。
コインロッカーの女 みどころ
この作品は韓国の犯罪映画としては近年あまり見られない女性キャラクター二人を主人公にした作品です。
キム・ヘスが演じるのは、本名も過去も分からない”母さん”と呼ばれるチャイナタウンの絶対的権力者で、これまでに見たことのないビジュアルの役柄となっています。
普段美人女優と呼ばれている人が、いくら役柄とはいえスッピンでそばかすだらけ、しかも太って腹も出てるなんてなかなか出来るもんじゃないです!
映画やドラマで見る闇金業者より圧倒的に恐ろしく、金のためなら臓器売買や人身売買はもちろん殺人も日常茶飯事という人物です。
対するキム・ゴウンは、これ迄にデビュー作『ウンギョ青い蜜』では大胆な濡れ場を、『その怪物』では狂気を、そして『メモリーズ追憶の剣』ではワイヤーアクションと、新人離れした難役を演じてきましたが、本作でもまた圧巻の演技を披露しています。
母さんと同様に感情に動かされることなく冷酷に仕事をこなすんですが、そんな中にも仲間思いな部分が見えたりと優しい面もあり、そんな彼女の変貌ぶりを見る作品でもあります。
とにかくこの二人の静と動の演技が素晴らしく、他の登場人物もそれぞれ魅力はありますが、あくまでも脇役に過ぎないと思わせる程の凄さがありました!
本作は一見すると他の韓国のサスペンス作品と比べ地味に思えるかもしれませんが、それは財閥や政治家などが関わってくる話でも、派手な銃撃シーンやカーチェイスがあるわけでもないからです。
しかし、物語の重みは凄く胸にガツンとくるものが確かにあるんです。
本作は闇社会について描かれた作品でありながら、家族について描いた作品でもあり、物語に入り込むと終盤は泣かされることになります。
コインロッカーの女 感想と評価・評判
物語の内容的には、ギャング映画などでもよく使われる裏社会の疑似家族を描いたものなんですが、そのボスが女性というのは珍しくそれがこの作品のネックでもあります。
キム・ヘス演じるボスは”母さん”と呼ばれるだけあって裏社会の母親的存在で、怒鳴るわけでもすぐに手が出るわけでもないのにまぁ怖いんです!
化粧っけの無さや、まるで感情が見えない目がその怖さの要因となっていて、それはソッキョンと出会う前までのイリョンにも感じるところ。
このように犯罪ドラマでありながら思ったほど暴力シーンの連続というのではなく、残虐な行為を淡々とこなしていくシーンがあるからこそ日常が麻痺しているだと感じて怖さを感じるんです。
キム・ヘス、キム・ゴウンの演技力は凄まじく、この二人の関係の変化を追った作品とも言えます。
もちろん、ソッキョン役のパク・ボゴムは本作の中で唯一明るい人物でイリョンを変える重要な人物として登場しますし、コ・ギョンピョもかつては母さんのもとにいたチンピラとして本作に刺激を加えています。
オム・テグの役もそこまでスポットが当たるものではないのですが、怖さもありながら家族思いな一面も見せ後半の活躍にはグッとくるものがあります。
このように本作は、驚きの展開やアクションよりも登場人物を描くことに注力した作品で、見る人によっては退屈とか地味と感じてしまうかもしれませんが、ただ派手な展開が続く作品よりもよっぽどドラマチックだと思いました。
まとめ:これは傑作!登場人物たちの心理描写がとてもうまく、多くを語るわけではないのに見るとその背景が透けて見えてくる作品となっています。映画の中で行われていることは残虐的なものなんですが、それが日常として描かれているというのは実に恐ろしいもの。ラストは泣けます!
最後に
この作品、もっとエグくて見るのが辛くなるものだと思っていたんですが、そんな行為を登場人物たちがさも普通に行っているため思ったほどエグさを感じませんでした。
そして本作からはどこかギャング映画のように感じるところも多く、直接的に家族の絆などが描かれているわけでもないのに何故か愛を感じてしまうんです。
大袈裟な感情表現なく見るものの心を動かせるというのは本当に凄いことです!