韓国ではファンが芸能人にプレゼントをしたり、差し入れをしたりする活動を総じて「サポート」と呼んでいます。
サポート活動をするのは、公式ファンクラブから小規模私設ファンクラブ、個人などタイプは様々ですが、それなりの費用がかかるだけに団体であることがほとんどです。
単なる贈り物にとどまらない韓国の芸能人サポート。
数十個のお弁当から数百人のスタッフが一緒に食べることができるケータリングサービスまでその種類と規模は多様多様です。最近では、芸能人サポートを専門とする業者まで出てきました。
これらのサポート文化は、国内外を問わず、ここ数年間で着実に発展し、さらに進化を続けていますが、問題点も指摘されています。
(トップ画像はケーキです。http://www.cakefactory.co.krより)
芸能人サポートの種類は?
サポートの理由は「ファンたちがどれくらいその芸能人を支持して応援する気持ちがあるのかというのを見せるため」、「現場でスタッフにかわいがられ、撮影がうまくいってほしい」と願う気持ちから生まれたものです。
芸能人サポートにはどういった種類があるのでしょうか?
【コーヒーワゴンの差し入れ】
(coffeegreateホームページより)
ロケ現場などにコーヒーワゴン(移動カフェ)を差し入れるのが数年前から流行っています。専門業者も多数存在し、応援メッセージの垂れ幕やバナースタンドなどでワゴンを飾り、その芸能人のお店であるかのように出店するのが一般的。撮影現場スタッフ全員に振舞われ、現場の雰囲気を和ませてくれます。
垂れ幕のメッセージにもファンのセンスが問われます。インスタグラムにお礼を載せる芸能人多数!
芸能人同士でコーヒーワゴンを差し入れることもしばしばあります。
詳しくはこちら↓

【移動食堂車の差し入れ】
(ファングムパプチャ公式ページより)
韓国は「食べること」が大事な国。きちんとした食事でなければ、現場の不満がつのり、番組制作にも響くのです。そのため、ロケ現場での食事は近年「移動食堂車」を雇うのが普通。ビュッフェ形式で、制作陣の好きな時間にできたてを食べることができます。
これをファンがサポートとして差し入れることもあります。全員分の豪華な食事をケータリングサービスで差し入れるなんて太っ腹ですよね!
垂れ幕は「○○(スターの名前)がおごります!」というものが多く、ファンが全額出して、そのスターのおごりだとしてスタッフに振舞うのです。
映画にキャスティングされたアイドルグループEXOのシウミンのファンたちは、映画撮影現場に40種類のメニューを楽しむことができる出張ビュッフェを提供し、現場のすべての制作陣たちに振舞われました。
それだけでなく、映画監督には、高級シャツとネクタイ・高級ワインが、同僚俳優たちにももれなくプレゼントが贈られました。
ギフトと食事はすべて「シウミン」の名前で提供されており、シウミンご本人だけでなく、現場のすべてのスタッフにプレゼントが贈られたのです。
(現在映画監督への貢物は法律で禁止されています。)
これらはすべて「自分の好きな芸能人が撮影現場で愛されるように」とのファンの気持ちによるものです。
詳しくはこちら↓

【お弁当の差し入れ】
(kimkitchen.comより)
ロケ現場には食堂車ですが、スタジオ収録の場合、食事はお弁当。ファンがアイドルのためにお弁当を送るサポートがあります。専用の業者も多数登場し、驚くほど豪華なお弁当が送られます。
特筆すべきはスタッフの分も準備すること。韓国では食事はみんなでするものなのです。
おかずはアイドルの好き嫌いやアレルギー、ダイエット中であるなども考慮され、どんな要望にもこたえてくれるオーダーメイド。
豪華なお弁当の数々をご覧ください!↓

【お祝いにケーキ】
(http://www.cakefactory.co.krより)
誕生日やお祝い事に贈られるケーキ。数ある芸能人サポートの中でもっとも古典的といえますがケーキ自体は近年どんどん華やかで豪華になってきました。
韓国で一般的に売られているホールケーキは2000円から3000円台が主流。オーダーメイドの豪華な芸能人サポートケーキはいくらするのでしょうか?
詳しくはこちら↓

【誕生日にラッピングバスや地下鉄広告】
憧れの芸能人の誕生日はファンにとっても一大イベント!1ヶ月も前から、ラッピングバスを運行させたり、地下鉄駅舎内の掲示板にお祝いの広告を載せたりします。
このサポートは「営業」とも呼ばれ、ファンがアイドルを売り出し、育てていく時代になったと言われています。近年この「営業」も多様化し、今後ますます発展する見込みです。
詳しくはこちら↓

サポートに必要な経費の集金は?
これらのサポートに最も重要なものは「お金」です。公式ファンクラブなどの場合、代表がお金を集めます。
ネットのファンクラブではサポート スタッフを選ぶのに代表、総務、現場スタッフなどを選出します。
ファン達でどんなサポートを進めるのか、予算はどの程度なのか、サポート品目はどの程度まで準備するのか、寄付をするならば寄付先と方式はどのようにするのか議論して決定します。
ファンサイトには、サポートのための掲示板が別に用意されており、サポートを総括する人が募金専用口座を公開し、ファンがその口座に入金します。
担当者は、募金の現状を掲示板に告知して、サポートが終了した後に使用履歴をアップします。
サポート内容と伝達過程などを写真に撮って投稿される場合も多く、サポートコストを用意する時から、支出するまでのプロセスを文書化・画像化して掲示板で確認することができます。
ファンが出す費用は1人当たり5000ウォンから3万ウォン程度(約500円から3000円)だとか。しかし「叔父ファン(サムチュンペン)」と呼ばれる30代以上の会社員が巨額を出したりすることもあるそうです。
このように全国各地のファンが容易に組織を結成できるのはインターネットの普及のおかげであり、サポート文化が定着するのに大きな影響を及ぼしたと言われています。
贈り物過熱競争で副作用の懸念
あるアイドルの誕生日に高級時計やブランドの衣類など、少なくとも合計3億ウォン(約3000万円)相当のギフトが贈られました。こういった贈り物は年々過熱。
そのほか、地下鉄の電光掲示板やラッピングバスなどに、誕生日を祝う広告が多数掲載されるなど、ファンが高額なサポートをすることに批判的な声が高まっています。
アイドルのファンサポートは10〜20代のファンがお金を出し合って行われることがほとんどです。
ブランドの服など高価なものを貢ぐ風潮が過熱され、競い合って無理な贈り物をするファンがいる中で、芸能事務所やスターがこれらを当然として高価な項目を要求するといった事例もあるとか。
あるラジオのパーソナリティ(40代女性)がゲストに
「普通、餅、果物、パンなどのお祝いの贈り物が(ファンから)たくさんあるものですけど、今日は何もないんですか?」
また別の日には
「あら、(花束が)私に来たんですね。これはなぜ送られたんでしょうか。○○(ゲストのアイドル)をかわいがってほしいという意味かしら?」
などと発言。「プレゼントの有無でゲストを差別する」と批判され、本人が謝罪したこともありました。
“本当にありがたいけど、無理して準備過程や現場で問題が生じないかと心配です。 また、時々このようなサポートを当然だと考えている芸能人やスタッフがいると、がっかりします。”(芸能事務所関係者B)
個人の経済的状況をかえりみず、無理して貢ぐファンもいることから、「すでに経済的に成功した芸能人に高価な贈り物が必要なのか?」と冷ややかな意見も。過度のプレゼントを懸念し、こういったサポートを拒絶した芸能人もいます。
アイドルビッグバンのテヤンは誕生日を控えて
「物は充分にあるから、私よりもっと必要なところに使って欲しいという私の気持ちを理解して欲しい。」
とツイッターに投稿しました。歌手ユンナも
「こういったもの(プレゼント)で競争したり、顔色を伺ったりするなんて悲しいと思う」
と断りました。
福祉的サポートが増加傾向
高価なプレゼントへの過熱した競争意識に対して、否定的な認識が高まり、最近では単純な贈り物ではなく、ボランティアや寄付といった形のサポート文化が徐々に増加する傾向にあります。
また、ファンがアイドルをマーケティングする時代になってきました。
自分が応援するアイドルのイメージメイキングのために寄付とボランティア活動、森林を造成することは、すでに代表的な事例と言えます。
【米花輪】
(doreame.co.krより)
ファンはお金を集めて好きな芸能人名義で恵まれない人のためにボランティアをしたり、団体に寄付したりします。
最も代表的で一般的な例としては、コンサート会場やドラマなどの制作発表の場に米花輪を送ること。
ファンはお金を集め花輪を送る代わりに、欠食児童を助けることができる米花輪を製作して寄付します。
詳しくはこちら

【ボランティア活動】
芸能人の名前で環境のための森を造成したり、カンボジアなどの井戸が必要なところに芸能人の名前を冠した井戸を掘るなどの、スケールの大きい福祉的サポートも出てきました。
2013年、EXOチェンの中国のファンは、チェンの名前でスコットランド北部の野生のイルカを後援して「イルカ養子縁組証明書」をプレゼントし、話題となりました。
ファン投票でデビューが決まるオーディション番組に出演中のアイドルの卵たち。
人気1位、2位のカンダニエル、パクジフンのファンはデビューに一役買おうと、彼らの名前で遺棄犬保護センターや子供病院小児病棟など、さまざまな団体に1000万ウォン相当のお金を寄付しました。
JYJのパク・ユチョンのファンは、2013年と2014年、2015年の三度にわたって島の村にパク・ユチョンの名前を冠した図書館を開館。
島の子供達のためのパクユチョン図書館3号店開館
(http://pop.heraldcorp.com/)
2015年にパルグム島に開館した「パク・ユチョン図書館3号店」は、地域の現実に合わせて多様に活用されるように作られました。
図書館機能のほかに自習室や、映画館のない村の子供たちのためにムービープロジェクトを設置し、映画館としても運営できるようにするなど、地域の子供たちに夢を与えられる空間をイメージしています。
2010年9月に創設された「ブレッシングユチョン」は、30歳以上のメンバーで構成され、闘病中のある子供に手術費1000万ウォンを支援したことを皮切りに、小児がんの子供の支援、水害復旧支援と暖房費支援、厳しい環境に直面しているいくつかの地域児童センターへの無料給食費サポート、独居高齢者のための練炭支給などの後援活動を広げています。
日本のアイドルは?
ちなみに日本のジャニーズ事務所は、会社側で一切の贈り物を禁止しています。
1980年代から、日本でも過度の贈り物合戦がありましたが、ジャニーズはファンレター以外のすべての贈り物を禁止にしました。
その結果、ファンはギフトの代わりにアイドル商品である「グッズ」を購入することで応援の気持ちを表しています。
最後に
サポート文化について大衆文化評論家のペグクナム氏は
「ファンが単純な消費者から抜け出し、芸能人のイメージを作成し推進する積極的な存在になった。募金したお金を芸能人の名前で慈善団体に寄付することが良い例」
と述べています。(http://weekly.donga.comより)
現在はファンがアイドルをマーケティングする時代。単純な高額サポートより、寄付やボランティアなど今後は芸能人のイメージメイキングのためのサポート活動が盛んになっていくことと思われます。