韓国人は食事をとても大切に考えていて、いくら忙しくても食事を抜いたり、お菓子や菓子パンで済ませたりはしません。
ちゃんとした食事でなければ、元気が出ない、健康ではないと思っています。その上、冷めた食事を極端に嫌います。そのため日本のようにお弁当の文化が発達しませんでした。
日本では野外の撮影現場で食事を取るとき、お弁当が支給され、それをロケ弁と呼んだりしますよね?お弁当文化がない韓国では、現場での撮影時、食事はどうするのでしょうか?
韓国の現場では移動食堂車を利用します。
撮影現場で、食堂車の経営者は俳優とスタッフの食事をすべて受け持ち、撮影期間中寝食を共にします。映画のエンドロールにも名前が載るほど映画制作の重要な役割を果たす一員と考えられています。
移動式食堂車を調べる中で、韓国の食文化が浮き彫りになりました。どうぞご覧ください。
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移動食堂車とは?
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移動食堂車とは、屋台で韓国料理、日本食、中華料理まで一度に100人分以上作ることができる食堂車で、現在80あまりの業者がありますが、最近は20の業者が盛行中だそうです。
食堂車は元々機動性が良く、山道や狭いところでも問題ない1.5トンの車両を改造していましたが、現在はもう少しさまざまな形態の業者が増えました。
内部は狭くても、一度に200人分を料理できる食器と調理器具、食材料を保管することができます。食堂車は調理士資格を所持した夫婦や親戚など、家族経営がほとんどだとか。
日本食料理人だった「사계절食堂車」のキムテワン社長は
「長期間、現場で宿泊しなければならない場合が多く、ほとんど家族経営。そして評判がよくなければ、現場に呼ばれない。食事が美味しくなければ絶対に経営できない」
と話しています。
(ちなみにこの社長は日本語通訳をしていましたが、料理にはまって日本で料理を学び、韓国で食堂経営。映画プロデューサーをしている友達の勧めで、移動食堂車をすることになったそうです。)
味と共に、食堂車を選ぶ基準は「誠意」と言われています。
プロデューサーの話によると、製作会社に人気がある食堂車は違うのだとか。
味も重要だけど、夜を明かして翌日まで続くような映画撮影を待つことができる忍耐力、極度に敏感になっている俳優やスタッフに冗談を言ったりできる余裕とその場を和ませられる人柄がなければ続けられないのだそうです。
移動食堂車パプチャのはじまり
現在、ロケ現場ならどこでも必ずある移動食堂車はいつから始まったのでしょう?
映画会社シネ2000イ・チュニョン代表がそれを正確に記憶していると言います。
「1999年でした。 以前は中華料理店に出前を頼んだり、お弁当を食べていました。」
意外と歴史は浅いんですね。イチュニョン代表によれば、移動食堂車の始まりは屋台だったそうです。
「学校伝説」という恐怖映画の中で、屋台が必要でした。小道具用で作るよりは本物を一台借りよう、ということになり借りたんですが、撮影中うどん食べたり、撮影後に一杯ってこともできるんです。それで「これはいい。撮影現場に常駐させよう」と思いました。
それ以降撮影現場に屋台、というのが定番になり、どの現場にも登場するように。
それから激しい競争の末、発展を遂げ、「밥차」パプチャと進化していきました。
パプチャとは直訳で「ごはん車」。移動食堂車はパプチャと呼ばれています。
移動食堂車パプチャの魅力
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食事を提供する側にとって競争相手は無数にあります。中華料理やピザなど、出前できる店も多くあるし、最近ではお弁当屋さんも増えてきました。
注文して簡単に食事を済ませることもできますが、2食続けてお弁当を出すと、スタッフから文句が出るそうです。
韓国は食事が大事な国なので、食事の不満が募れば、映画やドラマ、番組製作そのものに響くでしょう。
製作スタッフが近くの食堂を差し置いて、移動食堂車を愛用する理由は何でしょうか。
なんといっても、 決まった時間でなくても撮影現場状況に合うように調節して提供してくれると言うこと。移動食堂車の経営者の立場としては宿泊費と交通費は支給されるので、その点が利点と言えるでしょう。
ある映画の撮影現場を任された移動食堂車「サケジョル(四季)」は昼の12時に準備を終えて待機。午前の撮影が終わったのは12時半。70人あまりの撮影陣は1分も待たずに、食事ができたそうです。
いつどこででも望む時間に温かいご飯を食べることができるという点が最大の魅力。
スケジュールがいつも流動的な映画撮影現場に、これ以上ないサービスといえます。
移動食堂車の一人当たり平均一食7000W(約700円)。
製作会社の立場としても低価格で立派なメニューを利用できる長所があります。
特に移動する必要もなく、現場ですぐに3食たべることができ、時間の短縮にもなります。映画制作において費用削減効果も充分にあるでしょう。
バラエティ番組とパプチャ
映画のロケ現場から始まった移動食堂車ですが、現在、野外撮影をメインとするリアルバラエティ番組が多数登場、そのロケ現場でも必須要素となりました。
移動食堂車は出演陣はもちろん、製作スタッフのスタミナとなる食事の責任を負うだけでなく、つらい現場でぬくもりを感じることができ、温かい撮影現場の雰囲気を作るという大切な役割を果たしています。
#1泊2日#ご飯車#雨が降っても#ちゃんと並んで#いつも美味しい#暴食#太るばかり
移動食堂車のバラエティ番組での利用例としてKBSの看板番組「1泊2日」を挙げることにします。
「1泊2日」は100人余りのスタッフとともに6人のタレントが全国を旅しながら、地元の人と触れ合う番組。
この番組担当の移動食堂車はカンさんご夫婦(60代後半)が運営しています。
「1泊2日」シーズン1から今まで約7年間共にしたとか。
お二人は撮影出発当日の夕方と翌朝の食事を受け持ち、一度に約130人分、合計260分を準備。 一食の価格は8000ウォン(約800円)だそうです。
ご夫婦は「一緒に旅行するようで楽しい」とのこと。
「撮影現場スタッフは細かいところまで気を遣ってくれる。 献立には毎回悩む」
とも話しています。
人気バラエティロケ番組「サナミルリョ」と「ランニングマン」の食堂移動車を担当しているピョン・クンソプ社長は
「移動食堂車を運営して5~6年ほどになった。もちろん利益を追求するためにしていることだが私が作った食べ物をおいしく食べてくれると、やりがいを感じる。 今はみんな家族のようだ」
とのこと。食事で親睦が深まり、情がわくのでしょうね。
最後に
数年前から移動食堂車の差し入れがブーム!俳優が仲間や先輩、後輩へ、移動食堂車を贈り、毎度話題になります。太っ腹ですね~!
ファンの方々がお金を出しあって、差し入れることもあります。すごいですね!
サケジョル(四季)のキム・テワン社長によると、スタッフのほうが力仕事が多いので肉類を常に準備するとのこと。
「俳優たちはお金も時間も余裕があるから外で買って食べることもできますが、スタッフは時間もぎりぎりなので、ちゃんとした食事でなければならない。」との考え。
菜食主義者や特定の食べ物を食べられない俳優のために他のおかずを準備したり、その日最も大変だったスタッフのために特別な料理を準備したりすることもあるそうです。
「健康はきちんとした食事から」という韓国の基本的な考えに基づいて、俳優はもちろん、製作スタッフ全員の健康を任されている、という責任感を持ってやっているのですね。
移動食堂車が撮影スタッフの一員として、映画のエンドロールに名前が載るというのも納得です。今後、どのように発展していくのでしょうか?