イ・ビョンホン時代劇初挑戦作!
1200万人を越える観客動員となり韓国映画歴代TOP10入りもした超ヒット作です。
キャスト一覧や作品紹介、あらすじや感想をまとめました。
(トップ画像公式ページより)
王になった男【韓国映画】キャスト一覧
原題:光海、王になった男
英題:Masquerade
2012年9月13日韓国で公開
(日本では2013年2月16日公開)
上映時間:131分
観客動員数:約1230万人
監督:チュ・チャンミン
脚本:ファン・ジョユン
【光海君/ハソン役】イ・ビョンホン
【ホ・ギュン役】リュ・スンリョン
【王妃役】ハン・ヒョジュ
【ト部将役】キム・イングォン
【チョ内官役】チャン・グァン
【サウォル役】シム・ウンギョン
【パク・チュンソ役】キム・ミョンゴン
【ユ・ジョンホ役】キム・ハクチュン
作品紹介
本作の監督は『拝啓、愛しています』のチュ・チャンミンさん、脚本は第57回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した『オールド・ボーイ』のファン・ジョユンさんです。
2012年大鐘賞で最優秀作品賞を含む歴代最多の15部門受賞をはじめ、その他にも数々の賞を獲得し、2012年を代表する一作となりました。
主演のイ・ビョンホンさんにとっては初の時代劇作品であり、本格コメディそして一人二役というのも初挑戦となります。
ハン・ヒョジュさんは本作と同時期に映画『ファイヤー・ブラスト恋に落ちた消防士』の撮影もしており、そちらではコ・スさんと共演しています。
「神弓 KAMIYUMI」の リュ・スンリョンさんは、本作と同年に出演した『僕の妻のすべて』もヒットし、翌年には超ヒット作『7番房の奇跡』でも主演するなど大ブレイク!その全てで主演男優賞・助演男優賞を獲得しています。
他にも、個性派俳優のキム・イングォンさん(初の時代劇)や、ベテラン俳優チャン・グァンさん、「サニー 永遠の仲間たち」「怪しい彼女」のシム・ウンギョンさんなども素晴らしい演技を披露しています。
実話なの?
本作は童話「王子と乞食」をモチーフとした作品。
実在の王の話と童話を組み合わせたフィクションなのですが、韓国サイトでも一部ネチズンの間で「実話なのでは?」という論議がされていました。
映画の内容は王が宮廷から姿を消した数週間の話を扱ったもの。
実際に光海王の記録に、約15日間の行跡が抜けている部分があり、その間にあった出来事に想像を膨らませ、フィクションで作ったものだそうです。
王になった男【韓国映画】あらすじ
朝鮮の王クァンヘ(光海 イビョンホン)は、王宮を取り巻く権力争いと派閥争い、そして自身の命の危険も伴いひどく荒れていました。
そんな中で、王は都承旨ホ・ギュン(リュスンリョン)に自身の影武者を探すよう指示していたのです。
ある時、道化師として王の姿を真似ていたハソン(イビョンホン)を発見し、そのそっくりな見た目と巧みな話術に目をつけます。
いきなり王宮に連れてこられたハソンは、理由もわからないまま王の前へ連れていかれ、影武者となるよう言われるのでした。
当初は夜だけの身代わりとして雇われたハソンでしたが、王を狙う勢力によりハソンは15日間に渡って王に成りすますことになるのです。
王になった男【韓国映画】みどころ
何といってもイ・ビョンホンさんの見事な一人二役っぷりでしょう!
王とハソンは、見た目は同じでも中身は正反対というのが面白く、ハソンからはこれまでの王にはなかった熱い想いや優しさが感じられてきます。
落差の大きい二役を演じ分けたイ・ビョンホンさんの演技力が発揮された作品であると言えます。
王宮内は毒蛇ばかりで、正しいことをしようとしても邪魔が入ったり、間違ったことを罰しようとしても止められたりするところ。
そんな場所に影武者として入ってきたハソンが、庶民目線からものを言い善政を敷こうとするのはとても痛快です。
そんなハソンにどんどん周りが巻き込まれていくのも、見ていてとても楽しくなると思います。
ハソンとホ・ギュン、チョ内官のやり取りは面白く、本来は勝手なことをするハソンを怒るはずのところを、彼の善良さに惹かれて手伝ってしまうのも実に楽しい!
他にも、王様の生活の様子が庶民からするとかなり奇妙で、韓国ドラマに見るピリピリとした王宮内のものとは違いコミカルさが伺えます。
それは、一般の常識では考えられないものを見る面白さであり、トイレのシーンなどはちょっと下品ではありますが格別に面白いです。
腐敗した政治や王宮内のゴタゴタを描くのは時代劇作品ではよく見かけるもので、ドラマなどではそれを何十話にも渡って一進一退を見せているんですが、本作ではテンポよく痛快に描かれているのがポイントですね!
王になった男【韓国映画】感想と評価・評判
本作のヒットの要因としてまずあるのは”政治を風刺した作品でありながら、コミカルなエンターテインメント作品でもある”ということでしょう。
時の権力者や政治、社会などを批判する作品はどうしてもシリアスになりがちなんですが(特に日本人ではそう)、本作はそれを分かりやすくコミカルに描いたことで間口が広がったんだと思います。
普段韓国の時代劇は好んでみないのですが、本作には他の作品にある堅苦しさや小難しさがないのが嬉しいですね。
この映画の設定自体は、影武者が自我を出していくという事以外は良くあるものですし、ハソンの考えや行動自体は実に全うなものなんですが、その模範的な姿こそ観客が見たかったものなんだと思うんです。
どのドラマを見ても王でありながら、周りの勢力に気を配ったり母親に逆らえなかったりと、飾り物の王でしかなかったものを実に真っ正面から正論を語ってくれ、どこかむず痒い気もするんですが聞いていて胸の奥が熱くなり目頭も熱くなるんです!
王でありながら権力者たちに押されて命さえ危うかったものが、影武者として登場したハソンの正論により徐々に周りも影響され国を変える行動を起こす。
物語の流れとしてはよくあるものなんですが、これを二時間ちょっとの映画の中にうまくまとめたのが見事だと思います。
「立場変われば人変わる」とはよく言ったもので、これまで道化師として生きてきたハソンが、見た目がそっくりということで王の座に着き、それにより何かを変えようという気持ちになったという物語が本作。
ハソンの吐く言葉は、国の実情や細かい勢力のことなどを知らないから平気で言えたことなのかも知れませんが、国民はそういう真っ直ぐな王様を待っているからこそ、この映画が受け入れられたんじゃないでしょうか。
この映画を見ながら考えていたことは、ラストはハソンがこのまま王としてやっていくのか、それとも光海君が戻ったことで命を狙われてしまうのか、もしくは光海君もハソンの影響を受け共存していくのか、というものでした。
正直どのラストでもいいと思うんです!
短い間でも王として正しいことをしてきたハソンは、誰かに強い印象を残したことでしょうし、実際ホ・ギュンやチョ内官は完全に惹かれています。
史実をモチーフとしながらも、そこにフィクションを加えた本作が伝えたいものは、庶民であるハソンが一瞬でも理想とする王になった!ということじゃないでしょうか。
これは時代劇という媒体を使って、理想とするリーダー像を描き観客の喝采を得た作品なんです。
最後に
日本にも時代劇の傑作はもちろんあります。
しかし近年で見てみると玄人好みのものや、振り切ったエンタメ作品がほとんどで、本作のようなメッセージ性とエンターテインメント性のバランスが良いものは殆どありません。
この映画は韓国国民の5人に1人が見た大ヒット作です。
つまり、わかる人だけ見ればいいというのではなく、伝えたいことがあるならまずは多くの人に見てもらう必要があることをわかってる!ということなんです。
それは、時代劇だけでなく事件ものや政治や企業の腐敗などについての作品でも同様で、重たいメッセージ性があったとしても誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上げるということ。
もちろん何もかもエンタメ作品にすればいいわけではないんですが、このセンスに関しては残念ながら今の邦画は歯が立たないですね。