映画「ミナリ」は1980年代のアメリカンドリームを追いかけ、米アーカンソー州の農場にわたった韓国人家庭を描いた話。
「ウォーキング・デッド」シリーズのスティーヴン・ユァン、本作でアカデミー助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン共演。
キャスト、あらすじ、みどころ、感想をまとめました。
(トップ画像公式ページより)
映画ミナリ・キャスト一覧
日本公開日2021年3月19日
上映時間:115分
監督・脚本:リー・アイザック・チョン
製作総指揮:ブラッド・ピット/スティーヴン・ユァン他
チョン・イサク監督
ミナリは韓国系アメリカ人であるチョン・イサク監督の自伝的な話が元となっています。
1978年生まれ。ユタ大学大学院で映画学を専攻し、映画「開放の日」で演出デビュー。
2007年映画「ムンユランガボ」でカンヌ国際映画祭に進出、AFI映画祭で大賞を受賞。
モニカの母・祖母役:ユン・ヨジョン
ユンヨジョンは1970年~1980年代にアメリカで生活していた経験があります。
その時代を経験しただけに、同時期のモニカの感情をより理解できたことでしょう。
この当時海外へ移住するということは、もう二度と韓国の家族には会えないかもしれない、そんな決意だったそうです。
父親役:スティーブン・ユアン
スティーブン・ユアンのお父さんは韓国で建築家として成功しており、ある時アメリカに出張に来た時に、アメリカンドリームを抱き移民を決意したそうです。
そしてスティーブンユアンが4歳の時に渡米。お父さんはアメリカでまたゼロからスタートしました。
「ミナリ」の内容はご自身の家族の歴史と重なるものが多かったことでしょう。
母親モニカ役:ハン・イェリ
監督によると、モニカ役は韓国的な情緒が最も強いキャラクターであるため、韓国生まれで韓国育ちの俳優を選ぶつもりだったとか。
若い年齢で結婚して、経済的基盤もない上に子供は病気で、不慣れなところで生活をしているモニカをハンイェリが演じます。
息子デイビット役:アラン・キム
デイビット役を務めたアラン・キム君はこれが映画デビュー作。
監督とプロデューサーは当初から、デイビット役のキャスティングが映画の最も重要な点であるとしていました。
監督はデイビットと同じ年齢の娘さんがいるため、
「自分の要求を受け入れて演技するにはこの年齢では難しい」
と思い、少し年上の子役を選ぼうとしていたとか。
しかしアラン・キム君に出会って、当初の設定どおりのデイビットを描くことができました。
数えきれないほどのオーディション映像を見て、監督は
「もう一度見たいと思う子役はアラン・キムだけだった。私たちがみな度肝を抜かれた」
と話しています。
【アン役】ネイル・ケイト・チョー
デビッドの姉でしっかり者。
【ポール役】ウィル・パットン
ジェイコブを手伝いをする変わり者。
町では変人として知られているポールの存在は重要で、時折おかしな事を言うもののジェイコブたち家族に対して何の偏見もなく接してくれます。
そんなポール役は「アルマゲドン」や「フォーリングスカイズ」といった大作をはじめ、数多くの有名作に出演しているウィル・パットン。
過剰に目立つ脇役でもなく、かといって存在感もあるという見事な立ち位置にいます。
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映画ミナリあらすじ
舞台は1980年代のアメリカ。
カリフォルニアの大都市からアーカンソー州の片田舎に家族と共に引っ越してきた韓国系移民のジェイコブ(スティーブンユアン)。
妻(ハンイェリ)の反対を押し切って農業で成功しようと意気込んでいたジェイコブでしたが、周りに何もない荒れた土地にボロボロのトレーラーハウスがポツンとあるという状況を見て、妻のモニカから問い詰められることになります。
二人にはしっかり者の長女アン(ネイル・ケイト・チョ)と、心臓に病を抱えた弟のデビッド(アランキム)という子供がいるのですが、妻はデビッドの病気のことよりも自身の夢を優先しているかのような夫に不満が募っていたのです。
そんなジェイコブ一家のもとにモニカの母親(ユンヨジョン)がやって来て一緒に暮らすことになります。
久しく祖母と会っていなかった子供たちは最初敬遠するのですが、祖母らしからぬ毒舌と破天荒ぶりを目にするにつれ、次第に仲良くなっていきます。
一方、変わり者のポール(ウィル・パットン)と共に農業を始めたジェイコブは、水の確保や作物の卸し先に難航していて・・・。
映画ミナリみどころ
本作は、監督自身の子供時代を投影した韓国系移民家族の物語。
物語の中心となるのは監督がモデルになっているデビッドで、彼の視点から語られていきます。
移民を題材とした作品ではあるのですが、直接的な移民に対する差別やその時代の社会情勢といったものは描かれておらず、家族間での問題や農場を拓くということの難しさを中心に描いていています。過剰にドラマチックな演出がされていないのも特徴ですね。
農場を持つという夢があるジェイコブと、そんな夢よりも息子の病気のためにお金を使ってほしいモニカ、しっかり者で弟の面倒も見るアン、そして家族の中心人物デビッド。そんな4人を見守るのが、破天荒なおばあちゃんと変わり者のポール。
出演陣のナチュラルな演技はもちろん、ユン・ヨジョン、ウィル・パットンというベテラン俳優の存在感も抜群です。
人種に関係なくアメリカに移住した移民たちすべてに当てはまる物語!
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映画ミナリ感想・レビュー
場面場面でいいところはあったものの、全体としては可もなく不可もなくといった感じでしょうか。ただ俳優陣の演技力に関しては抜群でしたね!
移民たちの国家であるアメリカでは広く受け入れられたのでしょうが、だからといって世界中から拍手喝采されるような作品だったかといえば私はそうは思いませんでした。
アカデミー賞に6部門もノミネートされたのだって人種差別や格差問題に配慮したものっぽいですし、サンダンスでの評価も似たようなものかもしれません。
個人的にはそういった評判が本当の評価の邪魔をしてるようにも感じてしまいましたね。
移民ということを除けば、都会から田舎に移住してきて農業をはじめたり、友達もおらず寂しく感じたり、自然を相手にすることの大変さを描いたりと、こういったとのは他の作品でもよくあるもの。
そういった状況下での様々な家族間の問題や、ポールに対する町の住人からの差別なども描かれるのですが、しかし本作はその過程を過剰にドラマチックに描いていないのがよく、俳優陣の演技にも無理がないように見えるのがいいんですよね!
ユン・ヨジョンの異物感がいい味を出し、変人ポールのいい人ぶりもアクセントになるなど、人間ドラマとして魅力はあったのですが、いかんせんストーリーにインパクトがなく盛り上がりに欠けるというのが正直なところ。
ただ、これが韓国映画だったなら、変に笑いを入たり感動の展開にしたりと妙に作り物めいたものになりそうなので、それがないからこそ見る側の感性に任せる作品になったんだと思います。
かなり多くの人から受け入れられる作品だとは思いますが、とはいえ私には少し退屈でした。
まとめ:俳優陣の演技力は抜群でしたし、キャラクターの魅力もあったのですが、ストーリー的にはインパクトがなく見ていて退屈に感じてしまいました。
ただ、自分一人でやっていこうとしていたジェイコブが、ラストには人を信じて頼ってみようと思うようになったのは良かったですね!
最後に
これまで殆ど描かれてこなかったアジア系アメリカ移民を主人公にしたということ、そしてこの物語はアジア系のみならず他の人種でも当てはまるということ。
こういったところが高い評価を得たようなのですが、これは評価をしないと移民問題や人種差別問題に関心がないと思われてしまうからという要因もあったんじゃないかと思います。
アカデミー賞の受賞作品に関して毎年のように何らかの問題が出るように(白人ばかりが受賞するとかいった問題ですね!)、多くの人に置き換えられるという本作は広く評価を得やすかったんですよね。
別に悪い作品ではなかったのですが、どこかで見たような要素や展開が沢山あって(小屋が焼け落ちるシーンなどはベタ中のベタ!)、その上誰か特定の人たちを悪く言うようなこともなく、全体的に淡々と進行していくだけなんです。
それは広く浅く評価を得るのにはいいものの、もう少し登場人物を増やし主人公一家と対立するようなキャラクターも出さないと移民の辛さの表面しかなぞってないように見えてしまいます。
きっとこの物語の裏では大変な苦労が山積みだったと思うんですが、それらをもう少し描いて欲しかったですね!