村上春樹氏が1983年に発表した短編小説「納屋を焼く」を原作に巨匠イ・チャンドン監督が映画化!
ユ・アイン×スティーヴン・ユァン×チョン・ジョンソ共演によるミステリードラマ。
キャスト、あらすじ、感想、解釈、解説などをまとめました。
(トップ画像https://entertain.naver.comより)
バーニング劇場版【韓国映画】キャスト
2018年5月17日韓国で公開(日本では2019年2月1日公開)
上映時間:148分
観客動員数:約52万人
監督、脚本:イ・チャンドン
「グリーンフィッシュ」
「ペパーミント・キャンディー」
「オアシス」
「シークレット・サンシャイン」など
原作:村上春樹
「ノルウェーの森」
「1Q84」
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
など
【イ・ジョンス役】ユ・アイン
流通会社のアルバイト。小説家を目指している。
【ベン役】スティーヴン・ユアン
ヘミがアフリカで出会った謎の男。金持ち。
【シン・ヘミ役】チョン・ジョンソ
久々に再会しジョンスの幼なじみ。
【町内会長役】チョン・チャンオク
【ジョンスの母役】パン・ヘラ
本作の原作となったのは村上春樹ファンの間で名作と評判の短編集「螢・納屋を焼く」の中の「納屋を焼く」。
それをモチーフにし大胆にアレンジを加えた作品がこの映画です。
この劇場版公開前にNHKで編集版ドラマ(2018年12月2日に日本語吹替による95分短縮版)が放送された時は驚きましたが、その内容にもまた驚かされました。
NHKでは放送できない濡れ場などがカットされているのは分かりますが、本作の醍醐味とも言える原作のその後を描く部分が丸々カットされているんです。
劇場版公開前に結末が分かるものを放送する訳がなく、原作を忠実に再現した部分ならネタバレにならないのも分かるのですが、その結果原作と同様に謎が謎のまま残されて終わってしまい、これを見た方からは映画のイメージがついてしまうという不満の声もあがることに。
一方で、この続きが気になる編集は劇場版に興味を持つ切っ掛けになったという意見もあり、色んな意味で話題となりました。
このバージョンが日本での劇場版公開前に放送されたのには、村上春樹作品の権利を多く持つNHKとの版権問題があるらしいのですが、わざわざ日本語吹替した点も賛否を呼ぶことに。
そんな本作の監督・脚本を担当するのは、韓国が世界に誇る映画監督イ・チャンドンさんです。
作品数は多くないのですがそのすべてが韓国はもとより世界の映画祭でも高い評価を得ており、カンヌ国際映画祭の常連としても知られています。
本作も第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にエントリーされ国際批評家連盟賞とバルカン賞を受賞したほか、第91回アカデミー賞外国語映画賞にも韓国代表作として出品され最終選考まで残りました。
監督作品としては8年ぶりとなります。
さらには、前アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマが2018年のお気に入り映画に選んだことも話題となりました。
主演は、演技派俳優として名高いユ・アインさんに、「ウォーキング・デッド」で知られるスティーヴン・ユアンさん(本作により第44回ロサンゼルス映画批評家協会賞で助演男優賞を受賞)、そして演技経験のない新人のチョン・ジョンソさん。
当初は、カン・ドンウォンさんやf(x) 出身のソルリさん出演との報道もあったようです。
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バーニング劇場版【韓国映画】あらすじ
流通会社でアルバイトとしながら小説家を目指しているジョンスは、同じ村で育った幼なじみのヘミと偶然再会します。
二人はお互いに惹かれ合うようになるのですが、ヘミが夢であったアフリカ旅行に行くことになり、その際に彼女が飼っているネコの世話を頼まれることになります。
その後、旅行から帰って来たヘミからアフリカで知り合ったという男ベンを紹介されます。
このベンは謎多き男で、働いてもいないのに高級車に乗り贅沢な暮らしをしていました。
そんなベンから、ある日秘密を打ち明けられるのですが、その内容は「僕は時々ビニールハウスを燃やしています」という奇妙なものでした。
ベンに対して更なる疑念を抱くようになったジョンスでしたが、そんな中でヘミが姿を消してしまい・・・。
バーニング劇場版【韓国映画】みどころ
本作は、世界的映画監督イ・チャンドン×人気演技派俳優ユ・アイン×世界で人気のドラマ「ウォーキング・デッド」出演俳優スティーブ・ユアン×原作村上春樹という豪華なメンツによるミステリードラマです。
原作は謎だらけのまま終わる問題作(?)なのですが、本作は原作のその先を描いているというのがポイントであり、監督や出演者のファンのみならずハルキストからも注目を集めた作品となります。
原作とは舞台はもちろん時代背景も異なるのですが、原作を忠実に描いている前半や作品の空気感などから村上春樹さんへのリスペクトも伝わってきます。
内容としては、未来も見えない貧しい主人公と、主人公の希望とも言える幼なじみのヒロイン、そして謎の金持ち男の3人からなるドラマであり、そこには格差から生まれる嫉妬や金持ちや都会への憧れなど、現代人が抱える喪失感や拡大化する格差社会の問題などが描かれています。
登場人物は少ないのですが、ユ・アインさんのヒリヒリとした名演をはじめ、イメージとはちがった姿を見せてくれるスティーブ・ユアンさんの好演や、新人女優ながら大胆なベッドシーンを披露し今後の活躍も期待できるチョン・ジョンソさんと、その演技力の高さに注目して頂きたい作品となっています。
ストーリー的には、消えたヘミの行方や謎の男ベンの正体、そして電話を使った多くのジーンズなどミステリアスさが魅力の作品ですが、沈む夕日をバックにヘミが服を脱いで踊るシーンも美しいですし、マイルス・デイヴィスによる「死刑台のエレベーター」のテーマ曲の使い方なども本作の魅力となります。
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バーニング劇場版【韓国映画】解釈・解説・ネタバレ
謎というのは、
・ヒロインはどうしていなくなったのか?生きているのか、死んでいるのか?
・ビニールハウスは本当に燃やされていたのか?とか
・井戸のあるなし
・猫は実在したのか?
など、主人公の妄想なのか現実なのか定かでない部分が多々あり、さもすれば主人公以外の二人は主人公により作られた空想の産物という可能性もあるなど、本当に実在したのかさえ分かりません。
その辺は見る人によって意見が違いますし、そこを明らかにするのがテーマでもないんです。
したがって、これは主人公が現代社会で生きる上での複雑な感情を描いた作品ということであり、色んな解釈が出来るということ。
3人とも存在したかもしれないですし、主人公の別人格を描いた可能性やヒロインだけ存在しなかった可能性もあります。
そんなことを考えながら見たり、見終わって考察するのが面白い作品なんです。
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バーニング劇場版【韓国映画】感想・評価
私は村上春樹の原作を読んでおらずハルキストでもありませんが、監督やユ・アインのファンということで本作に注目していました。
正直、日本での劇場公開前にNHK版を見たときは何だかよく分からなかったのですが(吹替にも違和感があり)、完全版である本作の後半を見たら作品そのものに対する印象がガラッと変わりました。
とはいえ、難しい作品であることは変わりなく、人によって作品の捉え方も代わってくる作品ではあるので、その評価も賛否が分かれるかもしれません。
全ては主人公の妄想とも言えるでしょうし、ヘミの正体も謎に包まれていて本当に存在していたのかも分からないなど、様々な解釈が出来ます。
そんな曖昧さを楽しめる人にとっては本作は名作となるでしょうし、韓国の若者の実態を表現したメッセージ性も高く評価することでしょう。
それ以外にも、ヒロインが裸で踊るシーンなど映像として素晴らしいシーンもあり、総合的には評価すべき作品だと私は思いました。
ただ、いい作品だと思いながらも長くて暗い映画は見るのに覚悟がいるので、何度も見たいかと言われるとそれはしばらくは遠慮したいところ。
まとめ:見る人によって作品の捉え方も変わってくる不思議な映画!ミステリー作品でありながら、その謎を明かすことよりも主人公の内面を描くことに注力した作品です。
映像の美しさや音楽使いのセンスなど、ストーリー以外でも楽しめるポイントはありますが、人によっては意味不明と感じるかもしれませんね。
最後に
この映画は、村上春樹作品を原作にしただけあって見た後に人と色々語りたくなる作品でした。
あそこのシーンにはこういった意味合いがあったのでは?いや、あのシーンは夢だったのか現実なのか?など、どれだけ語り合っても結論は出てきません。
それは、原作自体が謎を多く残したまま終わっていますし、本作の後半が原作では描かれていない独自のものであり、そこでも謎に対する明確な答えは出ていないからです。